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退職代行で貸与品と書類はどこまで任せられる?返却と受け取りの確認手順

2026-11-01 執筆

出社せずに辞めても、会社の貸与品は郵送で返せます。離職票などの書類も、郵送で受け取れます。「返し方」と「必要な書類」を会社へ伝える役目は、民間・労働組合・弁護士のどの運営主体の業者にも頼めます。

分かれ目は、会社が「直接持ってこい」「返さないなら給料から引く」と条件をつけてきたときです。条件をめぐる話し合いは交渉にあたり、民間企業の運営では担えません。

この記事は、返すものの一覧づくりから、届いた書類の点検までを行動の順番で並べています。依頼の前に読み、手順1と2を済ませてから業者に連絡すると、やり取りが少なくて済みます。

業者に任せられる範囲の線引き

退職代行の業者が担えるのは、運営主体によって「伝える」までか「話し合う」までかに分かれます。貸与品と書類の場面に当てはめると、次の表のとおりです。

場面民間企業労働組合弁護士
貸与品を郵送で返すと伝えるできるできるできる
離職票などの書類を送ってほしいと伝えるできるできるできる
会社が出社での返却を求め、方法を話し合うできない団体交渉として話し合える話し合える
弁償や給料からの差し引きを求められ、金額を争うできない団体交渉として話し合える話し合いに加え、訴訟などの法的手続きも扱える

民間企業の運営で会社と条件を話し合うと、弁護士法72条が禁じる非弁行為にあたるおそれがあります。非弁行為とは、弁護士でない者が報酬を得て法律事務を扱うことです。民間の業者に「会社と話をつけてほしい」と頼むのは避けてください。3類型の違いの全体は労働組合と弁護士、民間は何が違う?で比べています。

手順1 返すものを依頼前に書き出す

最初にやるのは、会社から借りているものを紙かメモアプリに書き出すことです。一覧が手元にあれば、業者への説明も返送の梱包も同じ一覧で進められます。

種類例見落としやすい点
身分・入館社員証、入館カード、ロッカーや机の鍵財布やキーケースに入れたままの鍵
健康保険有効期限内の資格確認書(本人分と扶養家族分)家族が持っている分も返す対象になる
機器パソコン、社用スマホ、充電器、モバイルルーター電源アダプターやケーブルなどの付属品
衣類・備品制服、作業着、名札、工具自分で代金を払った品は本人のもの
書類・データ業務資料、顧客の名刺、USBメモリ自宅に持ち帰った紙の資料
お金に関わるもの法人カード、通勤定期券、仮払いの残金未精算の経費があれば領収書も添える

健康保険は、2025年12月から扱いが変わっています。協会けんぽ石川支部の案内では、有効期限内の資格確認書が会社への返却対象です。従来の健康保険証や「資格情報のお知らせ」、期限切れの資格確認書は返却不要とされています。会社の健康保険組合に加入している人は、組合の案内で返す対象を確かめてください。

資格確認書が使えるのは退職日までです。退職日の翌日以降に病院で使うと、あとで医療費の返還を求められることがあります。退職後の保険の切り替えは退職代行で辞めたあとの健康保険を整理した記事にまとめています。

書き出した一覧のうち、私物かどうか判断のつかない品には印をつけます。会社に置いたままの私物を返してもらう流れは私物が会社に残ったときの記事に、貸与PCのデータの扱いは在宅勤務中に退職代行を使う記事に分けて書いています。

手順2 受け取る書類を先に伝える

会社から受け取る書類は、依頼のときに「必要なもの」として名前を挙げて伝えます。特に離職票は、本人が希望しないと発行が省かれる場合があるため、名前を挙げる意味があります。

雇用保険法施行規則7条によると、会社は退職日の翌日から10日以内に資格喪失届をハローワークへ出します。このとき本人が離職票を希望しなければ、離職証明書を付けずに済ませられる決まりです(59歳以上の人を除く)。失業給付を受けるつもりなら、「離職票が必要です」と業者から伝えてもらってください。

書類法令上の決まり伝えるときの一言
離職票資格喪失届は退職日の翌日から10日以内(雇用保険法施行規則7条)。希望しないと省略されうる「離職票の交付を希望します」
源泉徴収票退職の日以後1か月以内に交付(所得税法226条)「源泉徴収票を郵送してください」
退職証明書本人が請求すれば遅滞なく交付(労働基準法22条)「退職証明書を請求します」と記載項目を添える
会社が預かっている年金手帳など預けたものは返してもらう対象「預けている年金手帳を返送してください」

退職証明書は請求したときだけ発行される書類で、使用期間や退職の事由など載せる項目を選べます。項目の選び方は退職証明書と離職票の違いをQ&Aで整理した記事で確認できます。

返送先の住所も、このときに伝えます。会社に登録している住所から引っ越している場合は、新しい住所を必ず添えてください。

手順3 送るときは記録が残る方法で

貸与品の返送は、追跡番号が残る方法で送ります。「届いていない」と言われたときに、送った事実を示せるのは追跡番号と控えだけです。

  1. 梱包する前に、返す品を床に並べて写真を撮る
  2. 手順1の一覧を印刷し、1部を同封して1部を手元に残す
  3. 追跡番号つきの方法で送り、受付の控えを保管する
  4. 送った日と追跡番号を業者に伝え、会社へ共有してもらう
  5. 配達完了の表示が出たら、画面を保存する

送り先の部署と担当者は、業者を通じて会社に確認してもらいます。総務あてか直属の部署あてかが曖昧なまま送ると、社内で荷物の行方が分からなくなることがあります。

パソコンや社用スマホは、返す前に私的なアカウントからログアウトします。業務データを消したり、自分の端末へ移したりはしないでください。会社の情報の扱いは、退職とは別のトラブルになります。

写真や控えは、退職後の手続きがすべて終わるまで残しておきます。離職票と源泉徴収票が届いたあとでも、数か月は消さずに置いておくと安心です。

手順4 届いた書類をその日に点検

会社から封筒が届いたら、開けたその日に中身を手順2の一覧と突き合わせます。足りない書類に早く気づけば、業者を通じて再度の送付を頼めます。

  • 氏名と退職日が正しく書かれているか
  • 離職票の離職理由の欄が、自分の認識と合っているか
  • 源泉徴収票の支払金額が、最後の給料まで含んでいるか

離職理由の記載に納得できないときは、離職票を持ってハローワークの窓口で相談してください。業者経由で会社に書き直しを求める場面は、会社が応じなければ交渉になります。

源泉徴収票が期限を過ぎても届かないときの順番は、源泉徴収票がもらえないときの4段階の対処法にまとめています。

「返していない」と言われたとき

会社から「貸与品が返ってきていない」と連絡が来たら、まず手順3の記録を確かめます。送った記録があれば、追跡番号と同封した一覧の写しを業者から会社へ示してもらいます。

本当に返し忘れていた品があれば、追加で送るのが先です。なくした品があるときは、なくしたことを正直に業者へ伝え、会社に共有してもらいます。黙っていると、あとで話がこじれます。

「返さないなら給料から引く」と言われた場合の考え方は、次の2つの条文が出発点です。

条文中身貸与品の場面での一般論
労働基準法24条賃金はその全額を支払うのが原則。差し引けるのは法令の定めか労使の書面協定がある場合会社が弁償代を一方的に給料から引けるわけではない
労働基準法16条違約金や損害賠償額をあらかじめ決める契約を禁止「返却が遅れたら1日◯円」のような取り決めは、この規定に反するおそれがある

ただし、借りたものを返す義務や、壊した品の実際の損害を負う可能性まで消えるわけではありません。どこまで負担するかは、品物の状態や就業規則、本人の同意の有無で変わります。

金額をめぐって会社と話し合う段階は交渉です。民間企業の業者に依頼している場合は、労働組合運営や弁護士運営のサービス、公的な労働相談窓口へ切り替えます。会社が差し引きや弁償を言い出しそうな職場では、最初から交渉のできる運営主体を選びます。途中で依頼先を変えずに済むためです。

会社に預けていた積立金や保証金は、労働基準法23条により請求から7日以内に返す決まりです。社内預金や財形の扱いは社内預金や財形を種類別に整理した記事にまとめています。

依頼先を選ぶときの目安

貸与品と書類のやり取りだけなら、どの運営主体でも「伝える」ことで足ります。次のどれかに当てはまる人は、交渉までできる運営主体を候補に入れてください。

  • 上司から「直接返しに来い」と言われそうな職場にいる
  • 高価な機器を壊した、またはなくした品がある
  • 未精算の経費や仮払金が残っている
  • 過去に退職者の書類が遅れた話を社内で聞いている

労働組合が運営するサービスは労働組合が運営する退職代行の一覧、弁護士が運営するサービスは弁護士が運営する退職代行の一覧で、対応範囲と料金を公式サイトの確認値で比べられます。依頼から退職後までの流れは退職代行のその後で表にしています。

この記事で確認した一次情報

いずれも2026年11月1日に実読して確認しました。

本記事は法令と公的機関の公開情報をもとにした一般論の整理です。貸与品の返却方法や弁償の範囲は、会社の就業規則や個別の事情によって変わります。会社が返却の条件をつける、給料からの差し引きを求めるなど話し合いが必要な場面では、労働組合運営・弁護士運営のサービスや、法テラス・労働基準監督署などの公的な相談窓口の利用も検討してください。