退職代行で源泉徴収票がもらえない?届く期限と4段階の対処法
2026-09-26 執筆(条文・国税庁ページは同日に実読して確認)
退職代行で辞めた場合でも、会社は源泉徴収票を退職日以後1か月以内に交付しなければなりません。根拠は所得税法226条1項で、辞め方によって例外は設けられていません。1か月を過ぎても届かないときは、交付を求めた記録を残し、税務署へ「源泉徴収票不交付の届出書」を出す流れになります。
この記事でわかることは次の3点です。
- 源泉徴収票の交付期限と、条文に書かれている中身
- 届かないときの4段階の対処法と、税務署が求める記録の残し方
- 転職先の年末調整に間に合わないときの確定申告
交付期限は退職日以後1か月以内
所得税法226条1項は、年の途中で退職した人の源泉徴収票について「その退職の日以後一月以内」に交付すると定めています。会社は同じ内容のものを税務署にも提出します。
退職金が出た場合は、給与とは別に「退職所得の源泉徴収票」も必要です。所得税法226条2項が、こちらも退職の日以後1か月以内の交付を定めています。給与分の1枚だけが届き、退職金分が届いていないケースもあるため、退職金がある人は2種類そろっているかを確かめてください。
期限までに交付しなかった会社には罰則もあります。所得税法242条6号は「一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金」と定めています。2025年6月施行の法改正で、以前の「懲役」は「拘禁刑」に置き換わりました。ただし罰則は会社の問題で、読者が会社に持ち出す必要はありません。
届かない理由は4つが中心
源泉徴収票が届かない原因には、事務の都合による遅れと、会社側の対応漏れの両方があります。退職代行を使ったあとに起きやすい理由を表にまとめました。
| 理由 | 見分け方と次の一手 |
|---|---|
| 最後の給与が確定していない | 源泉徴収票は最後の給与の額を載せるため、最終の支払日のあとに作られます。退職日から1か月以内なら待つ段階です |
| 送付先が伝わっていない | 退職と同時に引っ越した場合などに起きます。業者経由で新しい住所を伝え直します |
| 書類の依頼が会社に届いていない | 業者が会社に伝えた項目を確認します。退職意思だけを伝えて書類の話が抜けていることがあります |
| 会社が対応を後回しにしている | 1か月を過ぎても反応がない場合です。次の章の4段階に進みます |
届かないときの4段階の対処法
国税庁の案内に沿うと、対処は「期限の確認→交付の請求→記録→税務署への届出」の順になります。
1. 退職日から1か月たったか確認
国税庁のフローチャートは、最初に交付期限を過ぎているかを確かめるよう求めています。期限前は「勤務先での事務手続中の場合がある」とされ、届出の段階ではありません。退職日と最後の給与の支払日を手元にメモしておくと、判断が早くなります。
2. 業者経由か自分で交付を求める
次に、会社へ源泉徴収票の交付を求めます。退職代行の業者が連絡窓口になっているなら、まず業者に会社への確認を頼みます。
ここで運営主体の違いが関わります。民間企業の業者ができるのは、「源泉徴収票を送ってほしい」という本人の要望を会社に伝えることまでです。会社が交付を拒んで話し合いが必要になった場合、交渉できるのは団体交渉権を持つ労働組合か弁護士に限られます。3類型の違いは労働組合・弁護士・民間の違いを比較した記事で整理しています。
退職後の連絡を何日まで受け付けるかは業者ごとに異なります。依頼前に、退職後の書類の確認まで対応してもらえるかを聞いておくと安心です。
3. 請求した記録を5点残す
税務署へ届出をするときは、「勤務先に対して源泉徴収票の交付を求めたことが分かる書類等」を添付します。国税庁の確認用PDFは、請求の方法は面接・電話・文書のどれでもよいとしたうえで、次の5点をメモに残すよう求めています。
- いつ(交付を求めた日時)
- どこで(交付を求めた場所)
- 誰に(相手方の応対者)
- どのような方法で(面接・電話など)
- どのようなやりとりをしたか(相手の回答)
業者経由で請求した場合は、業者からの報告のLINEやメールを消さずに保存してください。ただし国税庁の案内には、代理人を通じた請求の記録が添付書類として扱われるかは書かれていません。確実にしたいなら、本人名義でも1回、日付入りの文書やメールで交付を求めておくと記録として残ります。
4. 税務署に不交付の届出書を出す
期限を過ぎても交付されない場合は、「源泉徴収票不交付の届出書」を納税地を所轄する税務署長に提出します。提出はe-Taxのほか、書面の持参や郵送でもできます。添付するのは、給与明細の写し(保存している場合)と、手順3の請求の記録です。
届出を受けた税務署は、会社に交付するよう行政指導をします。国税庁の案内は、行政指導には法律上の拘束力がなく、会社の自主的な協力が前提だと明記しています。届出を出したあとも、自分で会社に交付を求め続けるよう書かれています。
注意点が2つあります。1つ目に、この届出は一度受け取った源泉徴収票の再発行には使えません。紛失した場合は、自分で会社に再発行を頼みます。2つ目に、届出書の書面様式は2026年8月に変わりました。紙で出す場合は、国税庁ページに載っている最新の様式を使ってください。
年末調整に間に合わないときの確定申告
源泉徴収票が届かなくても、確定申告で税金を精算する道は残ります。退職後の状況ごとに、国税庁のタックスアンサーの内容を表にまとめました。
| 退職後の状況 | 税金の精算方法 |
|---|---|
| 同じ年に再就職し、前の会社の源泉徴収票がある | 転職先の年末調整に前の会社の給与も含めて精算します(No.2674) |
| 同じ年に再就職したが、源泉徴収票がない | 前の会社の給与額を確認できないため、転職先は年末調整ができません。自分で確定申告をします(No.2674) |
| その年は再就職しない | 年末調整を受けられず、税金を納め過ぎていることがあります。翌年1月1日から5年以内に還付申告ができます(No.1910) |
転職先がすでに決まっている人は、入社手続きで前の会社の源泉徴収票を求められます。届く時期の見込みを転職先の担当者に伝えておくと、年末に慌てずに済みます。入社日から逆算した依頼日の考え方は転職先が決まってから退職代行を使う記事にまとめています。
なお、失業給付の手続きに使うのは源泉徴収票ではなく離職票です。離職票の流れは失業保険の受給までを整理した記事で確認できます。
依頼前に伝えておく3つの情報
源泉徴収票のトラブルは、依頼の時点で書類のことを伝えておくと起きにくくなります。業者へ最初に相談するとき、次の3点を伝えてください。
- 書類の送付先の住所(引っ越し予定があれば新住所も)
- 源泉徴収票と離職票を郵送してほしいこと(退職金がある場合は退職所得の源泉徴収票も)
- 最後の給与の支払日(会社が源泉徴収票を作る時期の目安になる)
あわせて、在職中の給与明細は捨てずに保存してください。税務署への届出で添付書類になるほか、確定申告で金額を確かめるときの材料にもなります。退職後に届く書類と返却物の全体像は退職代行のその後を整理した記事で一覧にしています。
会社が書類の交付を渋りそうな職場なら、交渉ができる運営主体を選ぶ理由になります。労働組合が運営するサービスの一覧と弁護士法人が運営するサービスの一覧で、対応範囲と料金を公式サイトの確認値で比べられます。
この記事で確認した一次情報
いずれも2026年9月26日に実読して確認しました。
- 所得税法226条・242条(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033)
- 国税庁「F5-4 源泉徴収票不交付の届出手続」(https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei/23100017.htm)
- 国税庁「「源泉徴収票不交付の届出書」を提出される前に、ご確認ください。」(同ページ掲載のPDF)
- 国税庁タックスアンサー No.2674 中途就職者の年末調整/No.1910 中途退職で年末調整を受けていないとき