転職先が決まってから退職代行を使うには?入社日から逆算する依頼日
2026-09-23 執筆
内定をもらい、入社日も決まった。それでも今の会社に退職を切り出せない。この状態で退職代行を考えるなら、最初に確かめるのは入社日に退職が間に合うかどうかです。結論から書くと、退職代行への依頼日は入社日から逆算して決めます。この記事で整理するのは次の3点です。
- 入社日から逆算した依頼日の目安
- 有給が残っているときと在籍が重なるときの考え方
- 転職先に出す書類と健康保険の切り替え
結論は入社日の2週間前までに申し入れ
期間の定めのない雇用なら、入社日の前日を退職日にするには、その2週間前までに退職の意思を会社へ伝えます。根拠は民法627条1項です。退職の申し入れから2週間が過ぎると、会社の承諾がなくても雇用は終わります。
月給制の人も、労働者側からの申し入れは2週間で足ります。2020年4月施行の改正民法で、627条2項の対象が使用者からの申し入れに限られたためです。
契約社員など期間の定めがある雇用は、扱いが異なります。契約期間の途中で辞めるには、民法628条の「やむを得ない事由」が関わります。詳しくは契約社員・派遣でも退職代行は使える?で整理しています。
入社日から逆算した依頼日の目安
入社日を2026年10月1日に置くと、退職日は前日の9月30日です。民法の期間計算では申し入れた日を数えません。9月16日までに伝えれば、9月30日の終わりで雇用が終わる計算になります。
| 有給の残り | 退職日 | 会社へ伝える日の目安 |
|---|---|---|
| 残っていない | 9月30日 | 9月16日まで |
| 2週間分の出勤予定日より少ない | 9月30日 | 9月16日まで。残りの出勤予定日に有給を充てる |
| 2週間分の出勤予定日より多い | 9月30日 | 残日数に合わせて前倒し。週5勤務で残り20日なら9月2日ごろ |
有給は出勤予定日の単位で数えます。祝日や会社の休日があると、表の日付は前後します。業者が会社へ連絡できるのは相談と申し込みのあとなので、申し入れたい日の数日前には相談を済ませておくと日付がずれません。退職日の決まり方は退職代行で辞めると退職日はいつ?に表でまとめています。
在籍が重なる日は作らない
退職日が入社日より後になると、2つの会社に同時に在籍する期間が生まれます。有給を消化している間も、前の会社との雇用は続いています。
前の会社の就業規則に兼業を禁じる定めがあると、在籍の重なりが問題にされる余地があります。健康保険と厚生年金も2社分の届け出が必要になる場合があり、手続きが増えます。退職日を入社日の前日に合わせれば、どちらも起きません。
間に合わないとわかったときの選択肢は2つです。
- 転職先に入社日を相談する——本人が転職先の担当者へ連絡して調整します
- 有給の一部を使わずに退職日を早める——使わなかった有給は退職とともに消えます。どちらを取るかは本人が決めることです
転職先に出す書類は前の会社から届く
入社手続きで求められやすい書類は、前の会社から届くものが中心です。退職代行を使った場合も、書類の送付先や送付の依頼は業者を通して会社へ伝えられます。
| 書類 | 転職先での使い道 | 受け取りの目安 |
|---|---|---|
| 源泉徴収票 | 年末調整 | 退職日から1か月以内に交付(所得税法226条1項) |
| 雇用保険被保険者証 | 雇用保険の加入 | 退職時に渡される。会社が保管している場合もある |
| 基礎年金番号がわかるもの | 厚生年金の加入 | 手元の基礎年金番号通知書や年金手帳で確認する |
源泉徴収票が年末調整に間に合わないと、本人が翌年に確定申告をする流れになります。退職日が年末に近い人は、依頼の時点で送付を急いでほしいと伝えておけます。
健康保険は退職日の翌日に切り替わる
健康保険の資格は、退職日の翌日に失われます(健康保険法36条)。入社日が退職日の翌日なら、転職先の健康保険にそのまま移るので空白はできません。
1日でも空白があると、その期間は次のどれかに入る手続きが要ります。
- 国民健康保険——資格を失った日から14日以内に市区町村で届け出
- 任意継続——資格を失った日から20日以内に申し出(健康保険法37条)
- 家族の健康保険の扶養——収入などの条件を満たす場合
転職先に伝える義務は一般にない
退職代行を使って辞めたことを、転職先に伝える義務は一般にありません。業者への相談でも、転職先の社名まで伝える必要はありません。前の会社が転職先を知らなければ、会社同士で連絡が行く経路もありません。どこから伝わりうるかは退職代行はバレる?で整理しています。
運営主体で変わるのは退職日の調整
入社日の前日を退職日にしたいと会社へ伝えること自体は、本人の意思表示の伝達です。民間企業の運営するサービスでも伝えられます。
| 運営主体 | 退職意思の伝達 | 退職日・有給の交渉 | 訴訟などの法的手続き |
|---|---|---|---|
| 民間企業 | ○ | × | × |
| 労働組合 | ○ | ○(団体交渉権にもとづく) | × |
| 弁護士 | ○ | ○ | ○ |
分かれるのは、会社が「後任が決まるまで待ってほしい」と返してきた場面です。退職日や有給の消化を会社と話し合うのは交渉にあたります。民間企業がこの交渉をすると、弁護士法72条が禁じる非弁行為にあたるおそれがあります。有給を使い切ってから入社したい人は、労働組合が運営する退職代行の一覧か、弁護士が運営するサービスから選ぶことになります。
依頼前に手元で確認する4点
- 転職先の入社日——内定通知書や労働条件通知書で日付を確認します
- 有給の残日数——依頼日を前倒しするかどうかの根拠になります
- 就業規則の退職と兼業の条項——在籍が重なる場合の扱いを見ておきます
- 雇用契約の期間の定め——あるかないかで適用される条文が変わります