SES・客先常駐エンジニアの退職代行|常駐契約と貸与PCの扱い
2026-09-19 執筆
「常駐先との契約が来年3月まで残っている」「抜けたら会社に迷惑がかかる」。客先常駐で働くエンジニアの退職では、自分の雇用契約と会社間の取引契約が頭の中で混ざりがちです。手元には会社貸与のノートPCと常駐先の入館証があり、返却先も二か所に分かれます。この記事は、SESや受託開発で働く人が退職代行を検討するときの判断材料を、手順の順番で整理したものです。特定の業者をすすめる内容ではありません。
この記事でわかること
- 常駐先との契約が本人の退職を止められるのか
- 貸与PC・入館証・アカウントの返し方の考え方
- 運営主体3類型で変わる、交渉できる範囲
常駐先の契約と本人の退職の関係
常駐先との契約が残っていても、本人は退職できます。契約が二階建てになっているためです。
本人が結んでいるのは、所属会社との雇用契約です。常駐先との間にあるのは、所属会社と常駐先企業が結んだ準委任などの取引契約で、本人はその当事者ではありません。期間の定めのない雇用なら、民法627条により解約の申入れから2週間の経過で雇用は終了します。
常駐先への要員の補充は、所属会社が取引先に対して負う義務です。「客先に迷惑がかかる」は職場側の事情であり、本人の退職を止める法的な根拠にはなりません。退職代行は、この意思表示を本人に代わって所属会社へ伝えるサービスです。常駐先へ直接連絡するサービスではありません。
契約書に期間の記載がある有期雇用の場合は、前提が変わります。民法628条により、期間の途中の解約には「やむを得ない事由」が必要です。有期雇用の扱いは契約社員・派遣でも退職代行は使える?にまとめています。
辞めると決めてから完了までの5ステップ
常駐で働く人の退職は、次の順番で進めると手戻りが出にくくなります。
| 順番 | やること | 確認する中身 |
|---|---|---|
| 1 | 契約書を開く | 雇用期間の定めの有無、みなし残業時間、秘密保持の条項 |
| 2 | 会社のものを数える | 貸与PC、社用スマホ、入館証、社員証、技術書、ICカード |
| 3 | 交渉が要るか決める | 有給の残日数、みなし残業を超えた分の未払い、精算幅の下限割れ |
| 4 | 依頼先を選んで申し込む | 運営主体、料金、受付時間、連絡日時の指定可否 |
| 5 | 返却と受け取り | 返す物の郵送、離職票や源泉徴収票の受け取り |
ステップ3が、依頼先を決める分かれ目です。有給の消化や未払い分の支払いを会社と話し合ってほしいなら、伝達しかできない運営では足りません。
ステップ5で会社から届く書類と返す物の全体像は退職代行のその後で表にしています。
貸与PCと入館証の返し方
返却先は、持ち主ごとに分かれます。所属会社から借りたノートPCや社用スマホは所属会社へ、常駐先から渡された入館証やロッカーの鍵は常駐先へ戻すのが基本です。
常駐先に私物を置いたままのこともあります。この場合、業者は本人の希望として「郵送でのやり取りにしたい」と所属会社へ伝えられます。実際の受け渡し方法を最終的に決めるのは会社側です。常駐先と本人が直接やり取りするかどうかも、所属会社と常駐先の間で決まります。
アカウントの停止やソースコードの持ち出しには、退職後も効力が残る条項が絡みます。秘密保持の誓約は、在職中に結んだ内容が退職後も一定の範囲で続くのが一般的です。手元の端末に業務のデータが残っている場合、自分の判断でコピーや削除をせず、返却と合わせて会社の指示を仰ぐ形にしてください。
プロジェクト途中の賠償と言われたとき
「途中で抜けたら損害賠償だ」と言われても、金額があらかじめ決まっているわけではありません。労働基準法16条は、労働契約の不履行について違約金を定めたり、賠償額を前もって決めたりする契約を禁じています。「辞めたら違約金50万円」といった取り決めは、この条文に触れるおそれがあります。
実際に生じた損害の賠償請求まで禁じられているわけではありません。ただし請求する側が、損害の発生と金額、本人の行為との結びつきを示す必要があります。引き止めの場面で口にされる賠償と、裁判で認められる賠償は別ものです。条文をもとにした整理は退職代行を使うと損害賠償を請求される?にまとめています。
研修費や資格取得費の返還を求められるケースもあります。返還の約束が実質的に退職を縛る内容になっていないかが争点になる領域です。金額が大きい場合は、法的な検討ができる弁護士運営のサービスや公的な相談窓口を検討してください。
運営主体で変わる対応範囲
依頼先は3類型に分かれ、できることが違います。
| 運営主体 | できること | できないこと |
|---|---|---|
| 民間企業 | 退職意思の伝達のみ | 有給・未払金・返却方法などの交渉 |
| 労働組合 | 伝達と、団体交渉権に基づく有給消化・未払金などの交渉 | 訴訟などの法的手続き |
| 弁護士 | 伝達・交渉に加え、訴訟等の法的手続き | — |
民間企業の運営では、有給の消化日数や未払い分について会社と話し合ってもらえません。弁護士でない者が報酬を得て法律事務の交渉をすると、弁護士法72条が禁じる非弁行為にあたるおそれがあるためです。3類型の違いは労働組合と弁護士、民間は何が違う?で比較しています。
みなし残業を超えた分の未払いが疑われるなら、交渉できる運営主体が候補になります。有給を使い切ってから退職日を決めたい場合も同じです。
依頼前に手元で確認する3点
- 運営主体(運営会社名・労働組合名・弁護士名)が公式サイトで確認できるか
- 有給の消化や未払い分の交渉が必要か
- 返却する貸与品が所属会社と常駐先のどちらの持ち物か
3点を整理してから料金を比べます。当サイトの業者データベース21社のうち、正社員向けの料金を公表しているのは19社です。19社の価格帯は15,000円から55,000円でした(2026年8月6日〜9月18日に各公式サイトで確認)。料金順の一覧は料金の安い順 退職代行一覧、条件別の絞り込みは条件別 退職代行の比較から確認できます。