飲食店で働く人の退職代行|代わり探し・シフト・賠償の脅しをQ&Aで整理
2026-09-07 執筆
飲食店の退職では、人手が足りない現場ならではの言葉が出てきます。「代わりを連れてこい」「シフトを埋めてから辞めろ」「急に抜けたら店が潰れる」。この記事では、そうした場面をQ&A形式で3点にしぼって整理します。整理するのは3点です。言い分ごとの法律上の一般的な位置づけ、制服や鍵などの返し方、運営主体3類型のどれを選ぶかという判断材料です。
Q.「代わりを見つけてこい」と言われた
後任を採用する責任は、一般に会社側にあります。労働者が代わりの人員を探すことを退職の条件とする決まりは、法律にはありません。
期間の定めのない雇用であれば、民法627条により、退職を申し入れた日から2週間で雇用は終了します。会社の承諾は要件ではありません。人手が足りているかどうかは、この2週間の経過に影響しません。
ただし、契約期間が決まっているアルバイト契約の場合は考え方が変わります。次のQで扱います。
Q. シフトが来月分まで入っています
確定したシフトを最後まで消化しなければ辞められない、というルールは法律上ありません。シフトは業務の割り当てであって、退職の可否を決めるものではないためです。
注意したいのは契約の形です。飲食店のアルバイトでは、3か月や6か月といった期間の定めがある契約を結んでいることがあります。この場合、民法628条により、期間の途中で辞めるには「やむを得ない事由」が必要と整理されるのが一般的です。
もっとも、労働基準法137条という例外があります。期間の定めのある契約で働き始めてから1年を過ぎた人は、申し出ればいつでも退職できると定めた条文です。自分の契約書に期間の記載があるか、働き始めて何か月かを先に確認してください。有期契約の扱いは契約社員・派遣の退職の考え方と重なる部分があります。
Q.「損害賠償を請求する」と言われたら
店長の口から出る賠償の話は、その場の引き止め文句であることが少なくありません。実際に請求が認められるかは別の判断になります。
労働基準法16条は、違約金や損害賠償の額をあらかじめ決めておく契約を禁じています。「バックレたら10万円」といった取り決めは、この条文に反する可能性があります。
一方で、故意に店の設備を壊した場合など、実際の損害が生じたときの請求まで封じられているわけではありません。詳しい整理は退職代行と損害賠償にまとめています。
| 言われがちな内容 | 法律上の一般的な整理 |
|---|---|
| 「代わりが見つかるまで辞めさせない」 | 後任の確保は会社の役割。期間の定めがなければ民法627条で2週間後に雇用終了 |
| 「来月のシフトを埋めてから」 | シフトの割り当てと退職の可否は別の話 |
| 「辞めるなら罰金を払え」 | 賠償額をあらかじめ決めておく契約は労基法16条で禁止 |
| 「制服代を給料から引く」 | 賃金は労基法24条で全額払いが原則。控除には労使協定などの根拠が必要 |
| 「まかない代は天引きしておく」 | 同上。控除の根拠と金額の内訳を確認する |
Q. 制服や店の鍵はどう返しますか
郵送での返却が使えます。返す義務はありますが、出社して手渡す方法に限られるわけではありません。
返却物は、制服・エプロン・名札・店舗の鍵・タイムカード・社員証などです。鍵のように紛失リスクが高いものは、追跡できる方法で送り、発送記録を残しておくと後の確認が楽になります。
ロッカーに私物を置いたままの人は、退職代行に依頼するときに何がどこにあるかを伝えておきます。会社側への連絡事項として代行が伝えてくれます。
Q. 深夜手当や残業代の未払いがあります
未払い分の支払いを会社に求める行為は「交渉」にあたるため、依頼先の運営主体で対応可否が分かれます。ここが飲食店の退職でとくに効いてくる部分です。
深夜の割増賃金は労働基準法37条で定められており、午後10時から午前5時までの労働には25%以上の割増が必要です。閉店後の片づけ時間が労働時間に含まれていない、といった不一致が起きやすい時間帯でもあります。
依頼前に、タイムカードの写真やシフト表を自分で集めておきます。給与明細もそろえておくと、相談の話が具体的になります。未払い分がある場合の進め方は未払いの給料・残業代がある場合で整理しています。
Q. アルバイトでも使えますか
使えます。退職代行の依頼に、雇用形態の制限は設けられていないのが一般的です。
料金は、雇用形態を問わず一律としている業者があります。退職代行ネルサポは雇用形態を問わず15,000円と表示しています(2026-09-18時点の公式サイト確認値)。円満退職ユニオンは一律16,000円です(2026-09-18時点の公式サイト確認値)。アルバイトだから安くなるとは限らないため、時給と依頼料を並べて考える材料になります。
パート・アルバイトの立場での考え方はパート・アルバイトの退職代行にもまとめています。
Q. どの運営主体を選べばいいですか
有給の消化や未払い分の支払いを会社に求めたいなら、交渉ができる運営主体に絞ります。飲食店の退職では、この2つが論点になりやすいためです。
| 運営主体 | できること | 飲食店のケースでの目安 |
|---|---|---|
| 民間企業 | 退職意思の伝達のみ | 未払いも有給の残りもなく、辞める意思を伝えるだけでよい場合 |
| 労働組合 | 伝達に加え、団体交渉権にもとづく有給消化・未払金の交渉 | 深夜手当や有給の残りについて会社と話し合いが必要な場合 |
| 弁護士 | 伝達・交渉に加え、訴訟などの法的手続き | 賠償請求を実際に申し立てられた場合や、金額が大きい場合 |
民間企業の運営でも「有給の希望を会社にお伝えします」と表示している業者はあります。伝達と交渉は別物で、会社が断ったときに押し返す権限までは持ちません。交渉が必要そうなら、労働組合が運営する退職代行の一覧で運営組合名と料金を確認してください。
Q. 依頼前にそろえるものは
手元に情報がそろっているほど、相談から着手までが短くなります。飲食店の場合は次の5点です。
- 雇用契約書または労働条件通知書(期間の定めの有無を確認)
- 直近3か月分の給与明細
- シフト表とタイムカードの記録(写真で可)
- 店舗から借りているものの一覧(制服・鍵・名札など)
- 店長と本部、それぞれの連絡先
有給の残日数がわかる書類があれば、あわせて用意します。残日数が不明な場合は、交渉ができる運営主体に依頼したうえで確認を任せる方法もあります。