妊娠中でも退職代行は使える?辞める前に確認する5ステップ
2026-10-12 執筆
つわりで出勤がつらいのに、職場に退職を言い出せない。妊娠を伝えたら嫌みを言われた。そんな状況で退職代行を考える人もいます。
結論から書くと、妊娠中でも退職の意思は伝えられ、退職代行を使うことにも妊娠中だからという制限はありません。ただし退職日しだいで、出産手当金などの受け取り方が変わります。この記事では、依頼前に確かめる制度から退職後の手続きまでを5つの手順で整理します。
前提 妊娠中でも退職は本人の自由
期間の定めのない雇用(正社員など)は、民法627条により、退職を申し入れてから2週間で雇用が終わります。この条文に妊娠中かどうかの区別はありません。契約社員など期間の定めがある雇用では、民法628条の「やむを得ない事由」が関わり、個別の判断になります。
男女雇用機会均等法9条3項は、妊娠や出産を理由に解雇などの不利益な扱いをすることを禁じています。同法11条の3は、妊娠・出産に関する嫌がらせ(いわゆるマタハラ)を防ぐ措置を会社に義務づけています。辞める・辞めないは本人が決めることで、会社が妊娠を理由に引き止めたり責めたりする根拠にはなりません。
ステップ1 体調を優先して休む
最初にやることは、退職の準備よりも体を休めることです。つわりや体調不良で出勤できない日は、まず欠勤や有給の連絡で休んでかまいません。
労働基準法65条3項により、妊娠中の人は軽い業務への転換を会社に請求できます。続けるか辞めるか迷っている段階なら、退職の前にこの請求で負担を減らす道もあります。体調の判断は主治医の意見を聞いてください。
ステップ2 退職日の前にお金の制度を確認
妊娠中の退職では、退職日をいつにするかで受け取れるお金が変わります。退職代行に依頼する前に、次の表の項目を確かめておくと、あとで「辞める日を間違えた」と後悔せずに済みます。
| 制度 | 退職との関係(一般論) | 確認先 |
|---|---|---|
| 出産手当金 | 会社の健康保険に1年以上続けて加入し、退職日に受給中か受給できる状態(産前42日以内など)で、退職日に出勤していなければ、退職後も受け取れる場合がある | 加入している健康保険組合・協会けんぽ |
| 出産育児一時金 | 1年以上続けて加入していれば、退職後6か月以内の出産は元の健康保険から受け取れる場合がある。新しく入る国保や家族の扶養から受け取る方法もある | 健康保険組合・協会けんぽ・市区町村 |
| 失業給付 | すぐ働ける状態でないと受給できない。妊娠・出産で30日以上働けない場合は、受給期間の延長を申請できる | ハローワーク |
| 国民年金 | 退職後に国民年金へ切り替えた場合、出産予定日の前月から4か月分の保険料が免除される制度がある | 市区町村の年金窓口 |
出産手当金は条件を1つでも外すと退職後に受け取れなくなります。退職日に出勤しないことも条件の1つです。加入期間と出産予定日をもとに、どの日付で辞めれば対象になるかを健康保険の窓口で確かめてください。
ステップ3 頼みたい範囲で運営主体を選ぶ
退職代行は運営主体によって、会社と交渉できるかどうかが決まります。妊娠中は「退職日を制度の区切りに合わせたい」「有給を使い切りたい」と考えることがあります。その希望を会社と話し合うには、交渉できる運営主体が必要です。
| 頼みたいこと | 対応できる運営主体 |
|---|---|
| 退職の意思を伝えるだけ | 民間・労働組合・弁護士 |
| 退職日や有給消化を話し合う | 労働組合・弁護士 |
| マタハラの慰謝料を請求する・法的手続きをとる | 弁護士 |
民間企業の退職代行は、退職の意思を伝えることはできても会社との交渉はできません。弁護士でない者が報酬を得て交渉すると、弁護士法72条が禁じる非弁行為にあたるおそれがあるためです。3つの違いは労働組合と弁護士、民間の違いで、嫌がらせが絡む場合の考え方はパワハラが原因で退職代行を使うときで整理しています。
男性の担当者と話すのが負担なら、女性スタッフが対応するサービスもあります。たとえばわたしNEXTは女性専用で、合同労働組合toNEXTユニオンが運営しています。女性スタッフ対応のサービスは女性向けの退職代行一覧で料金順に確認できます。
ステップ4 依頼時に書類の送り先を伝える
相談の段階で、会社に頼みたい書類を退職代行へまとめて伝えます。体調が不安定な時期は、会社とのやり取りを1回で済ませるほうが楽です。
- 離職票(失業給付の受給期間延長に使う)
- 源泉徴収票
- 健康保険の資格喪失を証明する書類
- 出産手当金の申請書の会社記入欄(在職中の期間を含めて申請する場合)
出産手当金は、在職中の期間を含めて申請すると、申請書に会社が記入する欄があります。郵送での対応を会社に頼んでもらう形にすると、出社せずに進められます。返却する健康保険証や社員証も、郵送で返すことを伝えてもらいます。
ステップ5 退職後の保険と年金を切り替える
退職すると会社の健康保険の資格がなくなるため、次の保険に切り替えます。選択肢は任意継続・国民健康保険・家族の扶養の3つです。それぞれの期限と違いは退職代行で辞めたあとの健康保険で表にまとめています。
年金は、家族の扶養に入らない場合は国民年金への切り替えが必要です。手続きの期限と住民税の払い方は退職代行で辞めたら住民税と年金はどうなる?で確認できます。失業給付の受給期間延長は、離職票が届いてからハローワークで申請します。申請できる時期には決まりがあるため、出産前に一度ハローワークへ問い合わせておくと、出産後にあわてずに済みます。