定年後の再雇用・嘱託でも退職代行は使える?契約の形で変わる辞め方
2026-10-05 執筆
定年後に再雇用や嘱託で働き始めたものの、「途中で辞めたい」と悩む人がいます。仕事内容や待遇が定年前と変わり、合わないと感じるケースです。結論から書くと、再雇用・嘱託でも退職代行は使えます。ただし辞められる時期は、契約が「期間の定めのある契約(有期)」か「期間の定めのない契約(無期)」かで変わります。
特に60歳以上の有期契約には、若い契約社員とは違う例外があります。この記事では、契約の形ごとの辞め方と、依頼先の選び方を一般論として整理します。
結論は契約書の期間の欄で決まる
最初に確認するのは、雇用契約書や労働条件通知書の「契約期間」の欄です。同じ再雇用でも、書かれている内容で使える法律の条文が変わります。
| 契約の形 | 主に関係する条文 | 一般論としての辞め方 |
|---|---|---|
| 期間の定めなし(勤務延長など) | 民法627条 | 退職の申し入れから2週間で雇用が終わる |
| 有期契約で、期間の途中 | 民法628条 | 「やむを得ない事由」があれば直ちに解除できる。会社と合意できれば途中でも辞められる |
| 有期契約で、満了が近い | 契約の満了 | 更新しないと伝えれば、満了日で契約が終わる |
契約期間の欄に「1年」などの期間と更新の有無が書いてあれば、有期契約です。欄が空白なら、まず会社の人事に書面で確認してもらうと判断を誤りにくくなります。
60歳以上は1年経過ルールの対象外
60歳以上の有期契約では、「1年たてばいつでも辞められる」ルールが使えません。若い契約社員向けの解説をそのまま当てはめると、ここを読み違えます。
労働基準法附則137条は、1年を超える有期契約を結んだ人を対象にした条文です。契約の初日から1年たった後は、いつでも退職できると定めています。ただし同じ条文で、労働基準法14条1項各号の労働者は対象から外されています。14条1項2号に当たるのが「満60歳以上の労働者」です。
60歳以上の人は、最長5年の有期契約を結べる代わりに、1年経過後の自由な退職の対象外です。期間の途中で辞めるなら、民法628条の「やむを得ない事由」か、会社との合意が基本になります。何が「やむを得ない事由」に当たるかは個別の判断で、一律の線引きはありません。
有期契約の途中退職の一般論は、契約社員・派遣でも退職代行は使える?でQ&A形式で整理しています。
再雇用で起きやすい3つの詰まりどころ
再雇用・嘱託の退職では、正社員時代と同じ感覚で進めると次の点でつまずきます。
- 「65歳まで働く約束だった」と言われる——高年齢者雇用安定法9条は、65歳までの雇用の機会を用意する義務を会社に課す条文です。働く本人に65歳まで勤める義務を課す条文ではありません。
- 長年の上司や同僚に言い出しにくい——勤続が長いほど顔見知りが多く、直接切り出す負担が重くなりがちです。退職の意思を伝える部分は、業者に任せられます。
- 退職金や手当の扱いが分からない——定年時に退職金を精算済みか、再雇用期間に別の手当があるかは、会社の規程しだいです。受け取れる額は、規程の文面を確認してから判断します。
雇用保険は65歳を境に扱いが変わる
辞めた後の雇用保険は、離職したときの年齢で受け取る給付の種類が変わります。65歳未満で離職した場合は、一般的な失業保険(基本手当)の対象です。65歳以上で離職した場合は「高年齢求職者給付金」という一時金の扱いになります。
どちらも受け取れる額や条件は、加入期間や離職の理由で変わります。退職日が65歳の誕生日の前後になる人は、退職日を決める前にハローワークへ確認しておくと安心です。手続きの流れは退職代行で辞めたら失業保険はどうなる?にまとめています。
依頼する前にそろえる3つのもの
再雇用・嘱託の人が退職代行に依頼する前は、次の3つを手元にそろえておくと話が早く進みます。業者に伝える内容がはっきりし、依頼後のやり直しが減るためです。
- 雇用契約書か労働条件通知書の写し——契約期間・更新の有無・就業規則の退職の定めを、業者と一緒に確認できます。
- 退職日の候補——契約の満了日、65歳の誕生日、有給の残り日数を並べて書き出します。どの日を選ぶかで、満了で辞めるのか途中で辞めるのかが決まります。
- 返す物と受け取る書類の一覧——社員証や制服などの返却物と、離職票・源泉徴収票など受け取る書類を書き出します。
退職後は健康保険の切り替えも必要です。任意継続にするか国民健康保険に入るかなどは年齢や家族の状況で変わるため、加入先の窓口で確認してください。
依頼先は交渉が要るかで選ぶ
再雇用・嘱託の退職でも、依頼先の選び方は「会社と交渉が要るかどうか」で決まります。運営主体ごとの対応範囲は次のとおりです。
| 運営主体 | できること | 再雇用・嘱託での目安 |
|---|---|---|
| 民間企業 | 退職意思の伝達のみ | 無期契約で2週間後に辞める、または満了で更新しないと伝えるだけで足りる場合 |
| 労働組合 | 伝達+団体交渉権に基づく有給消化・未払金などの交渉 | 有期契約の途中で合意退職を求めたい、有給を消化したい場合 |
| 弁護士 | 伝達・交渉+訴訟等の法的手続き | 途中解除の可否や賠償の話でもめそうな場合 |
民間企業の業者は、会社との交渉ができません。交渉すると弁護士法72条の非弁行為に当たるおそれがあるためです。「途中で辞めさせてほしい」という合意の話し合いも交渉に含まれます。有期契約の途中で辞めたい人は、労働組合運営か弁護士運営が候補になります。運営主体や料金を客観的に見比べたい場合は、業者を条件で比較するから確認できます。